東京地方裁判所 昭和39年(ワ)8971号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕そこで、被告の製品―旧型(乙)、新型(丙)が本件実用新案(甲)の構造を具備しているかどうかについて検討する。
(一) まず、甲の(A)の構造と乙。丙の(イ)の構造とを対比すると、乙、丙がいずれも二個以上の赤外線放熱器を適当な間隔をおいて列設している点で甲と共通の構造を具えているが、その放熱面の向きが、甲では横向であるのに対し、乙、丙ではいずれも水平枠1の上面に対し約四〇度傾斜している点においてその構造に差異のあることが明らかである。
ところで、前記甲第一号証によれば、甲は、その赤外線放熱器を横向に列設することによつて、赤外線放熱器によつて焼成される上部の食品から生ずる滴等により赤外線放熱器の放射面を汚損することなく長期使用に耐え得るという効果を期待していることが認められる。これに対し、乙、丙では、赤外線放熱器Gの放熱面Aが斜上方に向いているためそのままでは食品が焼成される際に生ずる滴等で放熱面Aが汚損されるのを避けられない。そこで、乙、丙では、この弊害を防止する目的で、上端を折り曲げた阻止片4を有し下端に排出口(乙では4、丙では3)を形成した金属板(乙では5丙では4)を放熱面4を覆いつくすように放熱面の上方に設けるという格別の構造(前記(ロ)の構造)を採用し、これによつて甲と同一の効果を期待していることが、別紙目録第一号、第二号の各図面と説明書から明らかである。このように、前記甲と乙、丙とにおける赤外線放熱器の放熱面の向きに関する差異は、その効果の点でも著るしい差異となつてあらわれるのであるから、両者が同様の構造であるとはとうていいうことができない。
(二) 次に、甲の(B)の構造と、乙、丙の(ロ)の構造とを対比すると甲の反射板と乙丙の金属板とは、いずれも赤外線放熱器の前部に設けられる構造である点で共通するが、甲の反射板は、赤外線放熱器の前方に向つて斜上方向に傾斜して設けられるのに対し、乙丙の金属板は、赤外線放熱器の放熱面の下部からこれと一〇九度傾斜して設けられていること換言すれば赤外線放熱器の前下方に傾斜するように設けられている点で両者間には明白な差異のあることが認められる。
(三) 原告は、乙丙の赤外線放熱器から発散する赤外線および放射熱の一部は金属板によつて反射されながら上方に向つて食品に当ると考えられ、一方甲の赤外線放熱器から発散する赤外線および放射熱の一部は反射板にあたらずに直接食品に当ると考えられるから、両者はその作用効果において一致すると主張する。
しかしながら、前記甲第一号証によれば、本件考案では、前記(B)の構造によつて、赤外線放熱器から発散する赤外線および放射熱は斑なく反射上昇できるという作用を有することが認められるのであつて、乙、丙の(ロ)の構造がさきに認定したとおりである以上、到底これと同様の作用を営むものとは考えられないから、原告の主張は、採用の限りでない。
(四) してみれば、乙、丙が甲の(D)の構造を備えていることは、当事者間に争いがないけれども、その余の(A)、(B)の構造を備えていない以上、甲の技術的範囲に属しないことは、いうまでもない。(古関敏正 水田耕一 野沢明)